
TFTが給食支援を行っているケニア、タンザニア、ルワンダをはじめ、東アフリカ地域の多くの国では、全国統一の小中学校卒業試験が実施されています。これらの試験の目的は、学習目標到達度の確認や、中等教育に進学できる生徒の選抜など国によって異なります。 全国の成績優秀者の表彰や、地区や学校ごとの平均スコアの通知が行われることもあり、教員たちは卒業前の指導に熱心に取り組んでいます。
ルワンダでは小学6年生が卒業試験を受けます。給食支援開始すぐの2012年の合格率は全国平均を20パーセント以上下回っていました。しかし、給食の継続により児童の出席率は向上し、ここ数年の卒業試験では全国平均並みの合格率を達成しています。タンザニアのザンジバルでは、小学校卒業試験の成績優秀者は、寄宿舎付きの特別中学校に進学することができます。TFTが給食支援を行っている26校の小学校からの合格者数は、パンデミック前の25人から、パンデミック後には49人へと倍増しました。
ケニアでは教育制度の改革が進行中
ケニアでは2017年から教育制度の改革が進められています。従来の「初等教育8年・中等教育4年・高等教育4年」の8-4-4制から、「就学前教育2年・初等教育6年・前期中等教育3年・後期中等教育3年・高等教育3年以上」の2-6-3-3-3制への移行が進行中です。新制度では、初等教育が日本の小学校、前期中等教育が中学校、後期中等教育が高校にそれぞれ相当します。制度の変更と並行して、従来の知識偏重・暗記型の学習から、個々人の能力を育む学習をより重視するカリキュラムへの転換も図られています。
これまでは8年生と12年生が、それぞれKCPE*とKCSE*と呼ばれる全国統一テストを受けてきました。教育制度の変更に伴い、KCPEは廃止され、2024年からは6年生がKPSEA*と呼ばれる新たな試験を受けるようになりました。8年生は日本の中学2年生に相当し、2023年まで実施されていたKCPEでは、英語、算数、スワヒリ語、理科、社会の5科目で成績が評価されていました。試験は各科目50問の4択式で、合計500点満点です。算数は120分時間、英語は100分と長時間の試験です。試験の結果は小学校卒業後の進路にも大きく関わるため、TFTが給食を提供しているルシンガ島の小学校では、7年生と8年生に対して始業前の自習時間が設けられていました。多くの児童が早朝から登校し、熱心に学習に取り組む様子が見られました。今後は、日本の中学校に相当する前期中等教育への進学には、6年生で受ける試験(KPSEA)のスコアは関係なく、すべての児童が進学できる仕組みになるとされています。
*KCPE: Kenya Certificate of Primary Education
*KCSE: Kenya Certificate of Secondary Education
*KPSEA: Kenya Primary School Education Assessment
特別中学に進学したムズリヒ君
小学校6年生になったときに、給食が始まりました。学校でお昼ご飯が食べられるようになって、とても嬉しかったのを覚えています。5年生までは授業の途中で学校を抜け出して、海岸で魚を獲り、その魚を売ってお金を稼いでいました。農家の手伝いをして、お金を得る友達もいました。給食が始まってからは抜け出すこともなくなり、授業に集中することができ、落第もしませんでした。学校に通う生徒の数が増え、教室が足りなくなり、今はシフト制で授業が行われていると聞きました。
小学校の卒業試験でよい点数を取ることができ、寄宿舎のついた特別学校に通えることになりました。家族と離れて暮らさなければなりませんが、食事が出て、授業料もかからりません。ただ、学用品は自分でそろえる必要があり、進学に必要な試験を受けるにも費用がかかります。今でもお金を稼ぐために漁をしたり、学校の長期休みには働きに出たりしています。大学に進学したいという思いは強く、学業成績も十分ですが、経済的なことを考えると、本当に進学できるかどうかはまだ分かりません。

ケニアの8年生と同じKCPEテストに挑戦
算数の試験では、計算や図形の問題に加えて、文章問題も出題されます。中でも、学校給食の材料となるメイズ粉の重量を計算したり、ケニアの首都ナイロビから500km離れた港湾都市モンバサまでの乗り合いバスの移動時間を求めたり、水を貯める大型タンクの容積を計算したりと、生活に根差した内容が多く見られます。また、「銀行に預けたお金に年間12%の利子がつく」といった仮定からも、日本とは異なるケニアの社会常識が反映されていることがわかります。
問題
1.以下の4つの文章を一つのパラグラフにする際に、最も適切な順序を選びなさい。
- A: We dug holes in our school compound.
- B: We made a fence around each seedling.
- C: We planted and watered the seedlings.
- D: It was a tree planting day.
- D→ B→ A→ C
- D→ A→ C→ B
- A→ D→ B→ C
- A→ C→ D→ B
問1の答えを見る
2.次の文と最も近い意味の文を選びなさい。
Unless it rains, I will not plant beans.
- I will not plant beans when it rains.
- I will plant beans because it rains.
- I will not plant beans after it rains.
- I will only plant beans if it rains.
問2の答えを見る
3.ケビンは銀行に15,000ケニアシリングを預けました。銀行は1年複利で12%の金利を支払います。ケビンが2年後に得られる利息はいくらですか?
- 18,816 シリング
- 3,816 シリング
- 3,600 シリング
- 2,016 シリング
問3の答えを見る
4.. 24人の男性で6日間かかる工事を行います。作業の初日に8人が現場にあらわれず、次の日からも来ないことが分かりました。残った作業員だけで仕事を完了させるためには、当初の予定よりも何日間長くかかりますか?
- 3日間
- 4日間
- 9日間
- 15日間
TFT事務局より
支援先レポートNo.47
※印刷してポスターとしてご掲示いただけます
FOR
TWOの支援がこうして地域の自立へとつながる様子を見て、私たちの活動の意義を改めて実感しました。また、クリスマス特別メニューのように食を通じて文化に触れたり、周囲の人々との絆を深めたりする経験は、子どもたちの心に残る貴重な思い出になったことでしょう。学校給食をきっかけとして子どもたちが様々なことを学び、小さな目標を積み重ねて大きな夢を実現していけるよう願っています。今後も皆さまからのご支援をもとに、世界の子どもたちが健康に笑顔で過ごせるような環境づくりを支援してまいります。
2024年12月「朝日新聞GLOBE+」にて、フィリピンの様子を取材していただきました。こちらもぜひご覧ください!