ザンジバル政府主導の学校給食プログラム @ タンザニア ザンジバル
TFT支援に加えてザンジバル政府の予算も投入され、学校給食プログラムが拡大しています。
ザンジバルでは現在42の小学校で22,000人の子ども達に週5回の学校給食を提供しています。うち、27校15,000人分がTFTの支援で、残りをザンジバル政府が賄っています。(2024年5月現在) 学校で給食プログラムが始まると子ども達が学校へ来るようになります。例えば全校生徒が720人なのに、登校者数が180人だったり、別の学校では朝の始業時に22人が登校しても途中で帰ってしまい、終了時には10人しか残っていないことがありました。給食提供が始まると授業を最後まで受け、休まなくなりました。家で朝ごはんを食べずに登校する多くの子どもたちにとって、給食はその日の最初の食事なのです。
将来の可能性を引き出す学校給食
18歳のムズリヒ君は小学校6年生の時に給食が始まりました。以前はその日に食べるものを買うために、少額の報酬を得ようと、学校を抜け出して漁をしていました。給食があればその必要はありません。給食があることで学業に集中し、その結果、成績優秀者のみが入学を許される中学校へ進むことができました。教育は子ども達の将来の可能性を引き出し、大きな力となります。
クラス全員で輪になって座ってお粥を食べる様子
「学校給食がない頃、子どもはお腹が空いて機嫌が悪かったり、元気がなかった」とお話をしてくれたのは、2人の妻の間に10人の子どもがいるジュマさん。上の4人の子どもは給食がなかったので、朝から帰宅まで食べるものがなかったそうです。給食が出るようになってからは、子どもは穏やかで理知的になり、勉強をするようになりました。 ジュマさんは「子ども達にとって給食はとても有益なこと。ずっと続いていくことを祈っている」と話してくれました。
ザンジバルでは一夫多妻制が認められており、2人の妻に合計10人の子どもがいるジュマさんと妻のアーシャさん
地元政府による給食プログラムの管理と推進
給食プログラムを開始するにあたり、ザンジバル政府の教育省は給食提供を行う学校を選定します。都市部から離れた経済的に厳しい地域の学校の中から、調理に必要な水が確保できることが条件の一つになります。ザンジバルは地下水が豊富ですが、水を汲み上げるためのポンプと電力が必要になります。次に、ザンジバル政府教育省の担当者が生徒の保護者に向けて説明会を行います。政府が給食調理に必要な食材や、調理器具の手配と提供を行いますが、薪や水の調達、日々の調理、その他の運用は学校と保護者が協力して行いますので、学校や保護者から理解と協力を得ることがとても大切です。
調理や運営は各学校で行っています。ボランティアの保護者が交代で行っている場合や、全保護者からお金を集めて調理担当者を雇っている場合など、学校によって異なります。調理場も違いがありますが、最も簡易的な三石かまどの場合は、薪の周りに簡易的な五徳となる石を置き、その上に鍋を置いて調理します。数百人分を作るので重労働です。子ども達が楽しみにしている給食の為に、たくさんの大人たちが協力しています。
簡易的な調理場
ザンジバルの給食プログラムは、食材を提供する地元の農家グループにも多くのメリットをもたらし、地域経済にも貢献しています。自家消費のみの農業に従事していた零細農家が、このプログラムに参加することで農業省のトレーニングを受けて技術が向上し生産量が増加しました。話を聞いた農家は、学校給食という安定した市場で現金収入を得られるようになり、暮らしが大幅に向上したと話します。 教育省の担当者は、食材提供を行う農家グループと学校の架け橋も担っています。政府と契約を結んだ農家グループは、事前に約束した食材を決められた量だけ学校へ納入しますが、品質に問題があった場合などは、教育省の担当者が間に入って、品質を確認するなどして問題を解決する場合もあります。
給食プログラムに食材を提供する農家
ザンジバルの姿
ストーンタウンの海岸沿い
薪で調理する一般家庭
タンザニアのザンジバルは、美しいサンゴ礁の海に囲まれ、ヨーロッパから多くの観光客が訪れるリゾート地です。首都のザンジバルシティの中心部であるストーンタウンは、アフリカ文化とアラブ文化が融合したエキゾチックな街として世界遺産にも登録されています。 しかし、ひとたびストーンタウンを離れると、人々の暮らしはとても貧しい場合が多く、ザンジバル政府によるとザンジバルの貧困ラインは1世帯当たりひと月わずか4.9ドルです。国際貧困ラインである1人当たり1日2.15ドルと比較しても大幅に低く、地域全体の貧しさが窺えます。 このようなザンジバルで、TFTの支援により、ザンジバル政府主導で2014年に学校給食プログラムが開始しました。開始当時の資金は全てTFTからの支援だったのですが、徐々に政府予算も投入され、給食提供している学校数を増やしています。今後もザンジバル政府は給食提供する学校数を増やす戦略を立てて実行に尽力しています。
TFT事務局より
支援先レポートNo.46
※印刷してポスターとしてご掲示いただけます
2024年5月に、タンザニアのザンジバルへ視察に行って参りました。TFTとしては2014年から支援を続けていますが、個人的には初めて訪問する地でした。事前の資料などから読み取れる現地の経済状況は厳しいものである一方で、観光客向けの情報には美しい海のあるリゾート地を強調するものばかりで、その落差に戸惑いつつ理解を深めようと臨んだ視察でした。
実際にその落差は共存していましたが、協働パートナー団体やザンジバル政府と対話をし、給食提供の現場を見て感じたことは「未来への希望」でした。ザンジバル政府は給食プログラムを高く評価し、推進に力を入れています。学校の先生や保護者も給食提供を歓迎してくれています。そして何よりも子ども達や携わる大人たちの未来への希望を持つお手伝いが出来ていることを実感しました。
このレポートでは、TFTにお力添えくださっている皆さまからのご支援が、大きな意義を持って現地に届いている事が少しでもお伝えできていれば幸いです。