支援先レポートVol.41を公開しました

支援先レポートVol.41 / Jan 2023

学校給食は子どもたちのライフラインケニア ルシンガ島・ムファンガノ島

TFTが支援する、ケニア西部のヴィクトリア湖に浮かぶルシンガ島とムファンガノ島は貧困家庭の多い地域です。島に暮らす人々の多くは漁業に従事しており、水揚げ量の多い場所を求めて沿岸を転々とする漁師もいます。そのため親戚や祖父母宅にとり残される子どもが少なくありません。大家族で少ない収入の家庭では、お粥や漁でとれた魚の残りだけという食事は日常風景です。さらに困窮が厳しい場合は、一日に確実に食べられるのは給食だけという子どもたちもいます。ケニアでは主食のトウモロコシ粉や植物油の価格が高騰しており、食費を賄うだけで精一杯で、学費が払えない家庭も出てきています。

子どもたちの日常

ムファンガノ島に行くには本土から水上バスで約2時間かかります。1694mのクェツツ山がそびえ、カゲノ小学校校舎は急な斜面に建てられています。給食を調理するキッチンは湖岸にあり、給食時は、生徒は校舎から岸まで急な階段を下る必要があります。生徒の家や畑も同様に斜面にあることが多く、また水道が通っていないため、子どもたちは湖まで下りて水浴びや食器洗いをし、水のタンクを持ってその急な斜面を登ります。

栄養バランスのとれた給食メニュー

週2回はトウモロコシや豆を煮たギゼリが提供されます。ギゼリはケニア山山麓の部族の伝統料理ですが、今ではケニア全土で食べられています。茹でた豆とトウモロコシを、炒めたトマトと玉ねぎのソースに加え柔らかくなるまで煮ます。豆のタンパク質とトウモロコシの炭水化物が一緒にとれ、ケニアの昼食の定番メニューの一つです。

ケニアのトウモロコシはメイズ(英名)またはマヒンディ(スワヒリ語)と呼ばれ、食事に欠かせないものです。粉にしてウガリとして食べる以外にも、安価で手頃な昼食となる焼メイズが道端で売られています。メイズは日本で食べるスイートコーンと比べて表皮が白く固く、淡泊な味がします。


  • 明日の給食に使う豆の準備をしています

  • 食事前の手洗いは習慣化しています

  • 給食は友達と一緒に外で食べます

ルシンガ島・ムファンガノ島 インタビュー / 先生、保護者

  • スタントン先生 (ムファンガノ島カゲノ小学校) 3歳から6歳までのプレイグループの先生です。ムファンガノ島で生まれ育ち、ムファンガノ島に多いスバ族の出身です。 プレイグループでは食事の仕方やトイレの使い方、手洗いの大切さなどについても学びます。 また家で食事を満足に食べられない生徒がいるので、毎朝、昨日の夕食に何を食べたかを生徒に聞くことで、 子どもの健康状態などをチェックするようにしています。子どもたちが成長する姿を見るのが楽しいけれど、 この年齢の子どもは感覚が繊細で、幼年時の経験が子ども達の将来に影響を及ぼすため、大変な仕事でもあると話してくれました。

ムファンガノやルシンガ島の生徒の家庭を訪問しました


  • 漁業と農業の両立で生計を立てるトムとマーシィー夫妻
  • トム / マーシィー夫妻 ムファンガノ島のカゲノ小学校に子どもが通っているトムとマーシィー夫婦は家族11人の大家族です。 トムさんは漁に出ながら畑を耕し、朝の6時から夕方の6時まで働きます。マーシーさんは浜で魚の処理を手伝って賃金を得ています。 カゲノ小学校*に通う低学年の子どもは給食を食べられますが、公立学校に通う高学年の子ども達は給食がないため、昼は自宅に帰ってきます。 家に食べ物がない場合は、何も食べずに授業に戻ります。 子どもには教育を受けて自分よりも良い暮らしをして欲しいと考えています。

    *カゲノ小学校は保育園児~小学校2年生までのため、3年生からは公立学校に編入します


  • 市場で食材を売る事業をしているクインタさん
  • クインタさん クインタさんの子どももカゲノ小学校に通っています。夫はムファンガノ島で先生をしており、 クインタさんは市場で米や砂糖を売るお店を経営しています。 クインタさんのお宅にはテレビがありソーラーパネルで発電ができ、このあたりではかなり裕福な家庭です。夕食はお米や魚、野菜を買ってガスで調理をします。 残念なことに、最近子どもの一人を亡くしました。このあたりには診療所に医師がおらず、 唯一の看護師が休暇などで不在の場合は医療サービスが受けられなくなります。救急時はオートバイで大きな病院に行く必要があります。


  • 浜にはトタンで建てられた借家が並んでいます。
    住居の前にいるリリアンさんと一番下の息子
  • リリアンさん リリアンさんは夫と子ども5人の7人家族の母親です。 子ども3人はルシンガ島のカマヨゲ小学校に通っています。 夫は湖に漁に出て、リリアンさんも自宅の前の浜で、魚の処理などの仕事をして賃金を得ています。 漁や浜での仕事から得る収入は少なく、家賃や食費を支払った残りを学費として貯めていますが、子どもの試験代の150シリング(約167円)*の支払いができないこともあります。 夕食はお粥だけのことがほとんどで、週に数回程度、魚を口にすることができます。 子どもは学校に行けば確実に昼食を食べることが出来るので安心だと話してくれました。 最近の悩みは長男の進学についてです。成績優秀な長男が仮に高校に受かったとしても、学費が払えないため入学を諦め、 漁師になるしかないのではないかと心配しています。

    *2022年12月13日の交換レート。ケニアの公立小学校は学費は無料であるが、PTA費や試験準備費用、制服は保護者負担。

TFT事務局より

支援先レポートNo.41
※印刷してポスターとしてご掲示いただけます

アフリカ最大の湖、ケニア西部のヴィクトリア湖に浮かぶ島、ムファンガノ島とルシンガ島。エイズが蔓延しているこれらの地域では、学校に通う子どもたちの1/3が孤児です。厳しい環境に置かれている子どもたちですが、元気いっぱい迎えてくれ、カメラを向けると笑顔を見せてくれます。今回は、そんな彼らを支える大人たちの声をお届けしました。仕事に誇りを持ち、子どもたちに寄り添いながら次世代育成に取り組む先生たち。彼女たちの想いに共感するとともに、子どもたちの未来をつくっていくという強い信念と行動力に、尊敬の想いを抱いています。また、保護者にとっても学校教育を安心して受けられる環境は、希望となっています。学校給食に期待される役割は、命を繋ぐライフラインとしてだけでなく、子どもたち一人ひとりが希望する未来に向かうためのチケットであることを実感しています。「想いをもって行動する」。私たち一人ひとりができることについて問いを立て、多くの人と一緒に考えたりアクションしたりしていきたいと考えています。

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