支援先レポートVol.40を公開しました

支援先レポートVol.40 特集ページ Sep 2022

教育危機を乗り越え、学び続ける子どもたちルワンダ バンダ村

パンデミック初期には世界中の学校が閉鎖されましたが、アフリカ地域では再開後に学校に戻らなかった子どもがいると報告されており、
教育危機が懸念されています。バンダ村では2021年1月の学校再開後、以前とほぼ同数の生徒が学校に戻り、
その後の中退も増えていません。休校中に十分な自宅学習ができなかったため、
進級できずに同じ学年を繰り返している生徒もいますが、その子たちも積極的に授業に臨み、学習を続けています。
給食は子どもたちが学校に通い続ける大きな理由の一つです。

17歳のジョセフ君は小学校5年生です。7人兄弟で家計に余裕がなく、学校に通えない期間がありました。
給食のおかげで再び学校に通うようになりました。小学校を卒業した後は中学校に通い、さらに大学に進学したいという夢をもっています。

未来のために学び続ける子どもたち

ルワンダのバンダ村では現在幼稚園3園と小・中学校2校の生徒2,345人に給食を提供しています。
パンデミック初期の2020年には学校が10か月にわたって閉鎖されました。
閉校中の遅れを取り戻すために、この数年は学年暦を変更し、学期の間の休みを短縮するなどの対応がなされています。

ルワンダの子どもたちは6歳で小学校に入学します。けれど途中で学校に通わなくなってしまい、
数年後に復学するケースも珍しくありません。周りのクラスメイトよりも2~3歳上の子どもも多く、
十代になってから学校に戻り学びなおす子もいます。

ルワンダ全体では2010年代の後半に小学校の修了率が60%台から90%台に急伸しました。
中学校に進学を希望する子どもが増える中、学び続ける環境を整備することの重要性が高まっています。

初等教育修了率(参考:THE WORLD BANK)

ルワンダの感染症対策

新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、ルワンダは東アフリカの中でも最も厳格な感染防止措置を講じてきました。
感染者の多い時期には夜間外出が禁止になったり、バスなどの公共交通機関の乗車人数が制限されたりしていました。
薬局で抗原検査を受け、その結果がスマートフォンのアプリで確認できる仕組みも構築されています。

2022年7月に学年暦が終了しましたが、教室内ではマスクの着用が求められていました。
また手洗い指導などの衛生教育も続けられています。

学校での衛生教育に加えて、訓練を受けたユースボランティアが家々を回り、
字が読めない人のために感染症予防や予防接種のパンフレットの内容を説明しています。

政府予算とTFT支援の組み合わせ

ルワンダでは2021年秋から政府予算による学校給食が始まりました。未就学児から中学生まで全国の約300万人が対象です。
この政府予算による給食では、1食あたりの費用を150ルワンダフラン(RWF)としており、日本円に換算すると約20円です。
そのうち約3分の1にあたる56RWFを政府が負担し、残りの3分の2を保護者が負担するという仕組みになっています。
保護者は1食あたり13円の負担を求められています。

現金収入の手段をもたない家庭も多いバンダ村のような農村地域では、子ども一人あたり毎月300円程度を支払うのは容易ではありません。
保護者からは費用を徴収せず、政府からの予算を受け取ったうえで、毎日ではなく週に2回程度に縮小して給食を提供している学校も多い状況です。

バンダ村でも保護者からの一律の徴収は難しいことから、公立の小・中学校では週に2回は政府予算を活用した給食を提供し、
残りの3回はTFTからの支援による給食を提供しています。
政府予算による給食では、トウモロコシ粉やキャッサバ粉を使った主食ウガリに豆の煮込みや野菜を添えたものが定番メニューとして提供されています。
TFTからの支援による給食では、卵や牛乳、果物を使い、栄養バランスがとれるように工夫しています。
野菜や果物、卵、牛乳などは、主にバンダ村で収穫されたものが給食の材料として使われています。給食室の近くで鶏と乳牛を飼育しており、
卵と牛乳は貴重なたんぱく源となっています。食料価格が世界的に高騰するなかで、村内での地産地消の重要性がますます高まっています。

バンダ村 インタビュー


  • リリアーネ(14歳)
  • 両親が離婚し、それぞれ別のパートナーと生活を始めたことにより、私は叔母のところで暮らすことになりました。
    家族のことで大変な状況が続いたうえに、叔母も裕福ではないので、学校に通いたいという気持ちは消えていました。
    そんなときに叔母が、学校に通えば毎日給食が食べられると教えてくれました。
    今は小学校2年生のクラスに通っています。給食がなければ学校に通うことはなかったと思います。


  • マリー(4年生の担任)
  • 昨年教師になったばかりで、今は4年生に英語とキニヤルワンダ語(公用語の一つ)を教えています。
    教師の仕事を始めてすぐに、バンダ村では貧しい家庭出身の子どもも、休まずに学校に通い元気に過ごしていることに気がつきました。
    子どもたちは給食を楽しみにしています。子どものなかには、学校で食べる給食がその日の唯一の食事という子もいます。
    新型コロナウイルスのパンデミックという困難な状況にありますが、給食が子どもたちと保護者に希望を与えているのは間違いありません。

現地から届いた
ショートムービーを公開!

給食のある風景 in ルワンダ

TFT事務局より


支援先レポートNo.40
※印刷してポスターとしてご掲示いただけます

2010年の支援開始から10年以上が経ったバンダ村。かつて支援を受けた子どもの中には、大学卒業後村に戻り、
教師として次世代の育成に貢献している若者もいます。こうした報を聞くのは私たちにとってとても喜ばしく、
支援から自立への確かな歩みを感じさせます。教育を受けた若者が次世代を貧困から救う原動力へ。
年月を重ねることでこうした事例が積み重なり、村全体が自立に向けて前進していくであろうと期待が膨らみます。

SDGsの描く世界は、地域・時代を問わず1人1人がそのポテンシャルを遺憾なく発揮できる公平な社会です。
次世代を担う子どもたちの健やかな発育と教育はその核とも言えるでしょう。
給食支援によってこれらを支えてきた私たちにとって、コロナ禍は活動の重要性を改めて自覚させられる出来事でした。
バンダ村で生まれつつある良い循環を途絶えさせないためにも、自立まで伴走し続けることが大切であると感じています。

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