支援先レポートVol.39を公開しました

支援先レポートVol.39 特集ページ May 2022

食材配布の継続で、生徒をサポートフィリピン カステリヤホス

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は3年目に入りましたが、いまだ対面での授業が全国的に再開されていない国が世界中に23か国あり、フィリピンもその一国です。
2022年2月の時点で、フィリピンの一部の小学校では少人数での対面授業が開始されていますが、
TFTが支援するバライバイ小学校では、対面授業再開の見通しはたっていません。
生活の困窮を訴える家庭が多いことから、全生徒への食材パックの配布を継続しています。2月の配布では847名の生徒が食材を受け取りました。

生徒が登校できなくなってから、生徒の健康状態の把握が難しくなっています。生徒や保護者と学校の間の連絡にはソーシャルメディアが活用されていますが、生徒や学校関係者は、一日も早い対面授業の再開を待ち望んでいます。

自宅学習が続く

自宅学習が続くフィリピンでは、保護者が毎週、学校を訪問して学習課題を提出し、次の教材を受け取ります。課題の提出は進学や卒業の必須条件になっているため、100%の保護者が教材の受け取りに来ています。今のところ退学になった生徒はひとりもいません。

栄養バランスを考慮

予算が限られているなかで、食材は以下のような基準で選定しています。

  • 炭水化物と不足しがちなたんぱく質を含む食材
  • フィリピンで一般的に食用されているもの
  • 常温保存できるもの

食材パックに含まれている緑豆は、ギニサン・モンゴという豆のスープなどに利用されます。他にも粉ミルクやツナ缶などのタンパク質やお米やパスタの炭水化物など栄養のバランスを考慮した食材が含まれています。

チキンアドボはフィリピンのおふくろの味

食材パックには調味料として醤油と酢が含まれています。
フィリピンでは酢と醤油を使ったお肉の煮物(アドボ)はおふくろの味と呼ばれるポピュラーな料理です。
酢と醤油に砂糖を加えたアドボソースは、酸味と塩味に甘さがプラスされ、白いご飯にピッタリです。
年中気温の高いフィリピンでは、調理に酢を利用することで、保存性を高め、また食欲を増進するとされています。
鶏肉以外にも豚肉や、地域によってはイカやタコを使ったアドボもあります。

フィリピン観光省のウェブサイトでは チキンアドボの作り方が紹介されています。

現地から届いた
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カステリヤホスって
どんなところ?

厳しい経済状態の家庭が増えています

コロナウイルス感染症の拡大防止のためのロックダウンなどが理由で、バライバイ小学校の生徒の保護者の多くが失職したり、収入源を失っています。2021年7月に実施した保護者へのアンケート調査では、回答者の3分の2以上が、月収が貧困のボーダーラインである1万ペソ(約2万4千円)以下と回答しました。フィリピンの平均的な月収2万6千ペソを得ていると回答したのは367名中7名だけでした。もとから貧困家庭が多いバライバイ小学校ですが、コロナの影響による経済的な打撃は大きく、月収が3000Pペソ(7,200円)と回答した家庭も73世帯ありました。

また「子供に栄養価の高い食事を与えているか」という質問に対しては、半数が与えていると回答していますが、残りの家庭では、経済的な理由などで食事の質に影響が出ていることがうかがわれます。

TFT事務局より


支援先レポートNo.39
※印刷してポスターとしてご掲示いただけます

世界的に一斉休校が広がるという前例のない出来事が起こってから、丸2年以上が経過しました。ピーク時には世界中で約15億人が休校の影響を受けたとされています。

フィリピンにおける対面授業の長期停止の影響は、子どもたちの「栄養状態」や「学習進捗状況」だけでなく、日中を家で過ごす時間が増えたことによる「親との関係性」や、授業以外にも多くのことを得られる貴重な子ども時代を友達と過ごすこともできず大半の経験を失ってしまっていることによる「情緒面での成長」など、計り知れません。

そのような中、TFTが行う定期的な食材パックの提供は、生徒や親たちにとっての希望となっています。未だ対面授業再開の見通しは立っていませんが「生徒や親たちが学校との関係を持ち続けること」「対面授業再開後に生徒たちが学校に戻るという選択をできるようにすること」この2点が大切だと感じます。通常授業に戻っている東アフリカの国々においても、学校給食は子どもたちにとって長く続いた休校から戻る大きな動機となりました。

2022年5月9日に大統領選挙が行われ、新大統領の誕生により、新型コロナウイルス関連規制の緩和が期待されます。今後も政府の方針に注視しながら、子どもたちにとって希望であり、且つセーフティネットの役割を果たせるよう活動を続けてまいります。

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