学びを支える給食が、未来への一歩につながるまで
医学部へ通うリリアーネさん
TFTの支援先レポートは、今号で50号を迎えました。これまでの継続的なご支援に、心より御礼申し上げます。 本レポートではこれまで、学校給食が子どもたちの学びを支え、授業への集中力を高めるとともに、退学の防止につながっていることをお伝えしてきました。今号では、ルワンダ・バンダ村の小学校を卒業後、中学・高校を経て、現在は首都キガリで医学を学ぶリリアーネさんの歩みをご紹介します。2025年12月には、ビデオ通話によるインタビューを行い、生い立ちや進路について話を伺いました。
学校給食が支えた小学校時代
リリアーネさんは2005年、ルワンダのバンダ村で5人きょうだいの真ん中として生まれました。両親は現在も村で自給自足の零細農家として暮らしており、定期収入のある仕事には就いていません。5歳で幼稚園に入園した2010年に、TFTの給食支援が始まりました。幼稚園では、アルファベットの読み書きや簡単な算数に加え、歯磨きや手洗いといった衛生習慣も身につけたといいます。また、栄養不良と判断された子どもには卵や野菜を使った特別食が提供され、「お粥のほかに卵や牛乳の給食が出て、とても嬉しかった」と当時を振り返ってくれました。
バンダ村の小学校に通っていたリリアーネさんは、決して裕福ではない家庭環境の中でも、学び続けることができたといいます。朝ごはんを食べられずに登校する日もありましたが、学校で毎日提供されるお粥が、授業に集中するための大切な支えとなっていました。「お腹が空いていては勉強に集中できません。毎日の給食は、本当にありがたいものでした。」
ルワンダでは、小学校最終学年に全国統一の卒業試験が実施されます。リリアーネさんはこの試験で優秀な成績を収め、バンダ村ではなく、遠方にある寄宿制の中学校へ進学しました。
小さい頃のリリアーネさん
母の経験をきっかけに、医療の道へ
リリアーネさんの母親は、最初の子どもを流産で亡くしています。適切な時期に診断や治療を受けていれば、助かっていたかもしれない――その話を母から聞いたのは、リリアーネさんが10歳のころでした。もともと人の身体の仕組みに関心を持っていた彼女は、この出来事をきっかけに、医療に関わる仕事に就きたいと考えるようになりました。
一方で当時は、医師や看護師、助産師、コミュニティヘルスワーカーといった医療職の役割の違いや、必要な資格をどのように取得するのかについて、明確に理解していたわけではありませんでした。
医療の道が現実になった中高時代
中学・高校はバンダ村から遠く、寄宿制の学校に通いました。村に戻れるのは休暇中だけで、学費の負担も家族にとって大きなものでした。それでも両親は学業を支え続けてくれたといいます。 理系科目を得意とし、学業に励んだリリアーネさんは、中学時代に首都キガリで開かれた特別プログラムに参加し、初めて村の外の世界に触れます。中学3年生になる頃には、「努力を続ければ医師になれる」と確信し、勉学にいっそう打ち込むようになりました。
インタビューでは “working hard” という言葉が何度も聞かれました。厳しい環境の中でも、努力によって道を切り拓けるという彼女の信念を象徴しています。家庭環境を考えれば医師への道は容易ではありませんでしたが、全国で上位に入る成績を目標に、高校卒業まで全力で学び続けました。
高校生のリリアーネさん
医学部での学びと、その先にある志
努力を重ねた結果、高校3年生の卒業試験で全国トップ10に入る成績を収め、首都キガリの大学医学部への進学が決まりました。学費は政府の奨学金で賄われていますが、卒業後には返済義務があります。キガリでの生活費は家族や親戚の支えを受けながら何とかやりくりしており、経済的に余裕があるわけではありません。 こうした現実と向き合いながら、ルワンダの医学部の課程(6年半)で学びを続け、現在は2年生として日々勉学に励んでいます。
将来の目標について、次のように語ってくれました。 「キガリでの生活は、バンダ村とはまったく違い、最初は一人でやっていけるのか不安もありました。医師として経験を積むだけでなく、後輩の女子生徒や女性のロールモデルになりたいと思っています。女性の健康や権利が軽視されがちな社会の中で、少しでも多くの女性が自分の力を発揮できるよう、支えられる存在になりたいです」。
大学のキャンパスで撮影したリリアーネさんの近影
「給食をはじめとした周囲からの支援のおかげで、未来に夢を描く勇気を持つことができました。皆さんのご支援は、私自身だけでなく、村で暮らす人々の人生を支える力にもなっています」 リリアーネさんの言葉は、学びの環境を整えることが、子どもたちの可能性を広げる確かな力になることを伝えています。

TFT事務局より
支援先レポートNo.50
※印刷してポスターとしてご掲示いただけます
インタビュー中、リリアーネさんは、給食支援を含む周囲からのサポートへの感謝を強調していました。今の自分の成功は、決して一人の力だけで成し遂げられたものではない——その実感が、言葉の端々から伝わってきました。その想いが、まだ20歳の彼女に「社会や後進に貢献したい」という気持ちを抱かせているのかもしれません。受けた恩を次に渡すことで、次の世代も豊かに。こうして良い循環が生まれればこれほど嬉しいことはありません。
インタビューに立ち会った私自身、彼女のストーリーにとても励まされ、希望をもらいました。「学校給食のおかげでがんばれた」と言ってくれましたが、同時に、リリアーネさん自身が学校給食の価値を最大限に引き出してくれたとも言えるでしょう。彼女の歩みは村の子どもたちを導く光となっていくはずです。子どもたちが持てる力を発揮し夢を持てるための土台を、これからも皆様とともに作っていきたいと思います。