支援先レポートVol.48を公開しました

支援先レポートVol.48 / May 2025

東アフリカの全国統一の小中学校卒業試験

TFTが給食支援を行っているケニア、タンザニア、ルワンダをはじめ、東アフリカ地域の多くの国では、全国統一の小中学校卒業試験が実施されています。これらの試験の目的は、学習目標到達度の確認や、中等教育に進学できる生徒の選抜など国によって異なります。 全国の成績優秀者の表彰や、地区や学校ごとの平均スコアの通知が行われることもあり、教員たちは卒業前の指導に熱心に取り組んでいます。

ルワンダでは小学6年生が卒業試験を受けます。給食支援開始すぐの2012年のバンダ村の学校の合格率は62%で、全国平均の83%と比較して20ポイント以上、下回っていました。給食が継続するに伴って児童の出席率も向上し、ここ数年の卒業試験では全国平均並みの合格率を達成しています。タンザニアのザンジバルでは、小学校卒業試験の成績優秀者は、特別中学校に進学することができます。TFTが給食支援を行っている26校の小学校からの合格者数は、コロナパンデミック前の25人から、パンデミック後には49人へと倍増しました。

特別中学に進学したムズリヒ君

タンザニア・ザンジバルの学校に通っていたムズリヒ君は、小学校6年生になったときに、給食が始まりました。学校でお昼ご飯が食べられるようになって、とても嬉しかったのを覚えています。5年生までは授業の途中で学校を抜け出して、海岸で魚を獲り、その魚を売ってお金を稼いでいました。農家の手伝いをして、お金を得る友達もいました。給食が始まってからは抜け出すこともなくなり、授業に集中することができ、落第もしませんでした。学校に通う生徒の数が増え、教室が足りなくなり、今はシフト制で授業が行われていると聞きました。

小学校の卒業試験でよい点数を取ることができ、特別学校に通えることになりました。家族と離れて暮らさなければなりませんが、食事が出て、授業料もかからりません。ただ、学用品は自分でそろえる必要があり、進学に必要な試験を受けるにも費用がかかります。今でもお金を稼ぐために漁をしたり、学校の長期休みには働きに出たりしています。大学に進学したいという思いは強く、学業成績も十分ですが、経済的なことを考えると、本当に進学できるかどうかはまだ分かりません。

ケニアでは教育制度の改革が進行中

ケニアでは2017年から教育制度の改革が進められています。従来の「初等教育8年・中等教育4年・高等教育4年」の8-4-4制から、「就学前教育2年・初等教育6年・前期中等教育3年・後期中等教育3年・高等教育3年以上」の2-6-3-3-3制への移行が進行中です。新制度では、初等教育が日本の小学校、前期中等教育が中学校、後期中等教育が高校にそれぞれ相当します。制度の変更と並行して、従来の知識偏重・暗記型の学習から、個々人の能力を育む学習をより重視するカリキュラムへの転換も図られています。

これまでは8年生と12年生が、それぞれKCPE*KCSE*と呼ばれる全国統一テストを受けてきました。教育制度の変更に伴い、KCPEは廃止され、2024年からは6年生がKPSEA*と呼ばれる新たな試験を受けるようになりました。

8年生は日本の中学2年生に相当し、2023年まで実施されていたKCPEでは、英語、算数、スワヒリ語、理科、社会の5科目で成績が評価されていました。試験は各科目50問の4択式で、合計500点満点です。算数は120分、英語は100分と長時間の試験です。
試験の結果は小学校卒業後の進路にも大きく関わるため、TFTが給食を提供しているルシンガ島の小学校では、7年生と8年生に対して始業前の自習時間が設けられ、多くの児童が早朝から登校し、熱心に学習に取り組む様子が見られました。

今後は日本の中学校に相当する前期中等学校には、6年生の試験のスコアは関係なく入学できるようになるとされています。ただ移行期ということもあり、中等教育がTFTが支援する地域でどのように浸透していくかは、今後の保護者や教員、行政のあり方によりそうです。

*KCPE: Kenya Certificate of Primary Education
*KCSE: Kenya Certificate of Secondary Education
*KPSEA: Kenya Primary School Education Assessment

ケニアの8年生と同じKCPEテストに挑戦

算数の試験では、計算や図形の問題に加えて、文章問題も出題されます。中でも、学校給食の材料となるメイズ粉の重量を計算したり、ケニアの首都ナイロビから500km離れた港湾都市モンバサまでの乗り合いバスの移動時間を求めたり、水を貯める大型タンクの容積を計算したりと、生活に根差した内容が多く見られます。また、「銀行に預けたお金に年間12%の利子がつく」といった仮定からも、日本とは異なるケニアの社会常識が反映されていることがわかります。

問題

1.以下の4つの文章を一つのパラグラフにする際に、最も適切な順序を選びなさい。

  • A: We dug holes in our school compound.
  • B: We made a fence around each seedling.
  • C: We planted and watered the seedlings.
  • D: It was a tree planting day.
  • D→ B→ A→ C
  • D→ A→ C→ B
  • A→ D→ B→ C
  • A→ C→ D→ B
問1の答えを見る
答え:②

2.次の文と最も近い意味の文を選びなさい。
Unless it rains, I will not plant beans.

  • I will not plant beans when it rains.
  • I will plant beans because it rains.
  • I will not plant beans after it rains.
  • I will only plant beans if it rains.
問2の答えを見る
答え:④

3.ケビンは銀行に15,000ケニアシリングを預けました。銀行は1年複利で12%の金利を支払います。ケビンが2年後に得られる利息はいくらですか?

  • 18,816 シリング
  • 3,816 シリング
  • 3,600 シリング
  • 2,016 シリング
問3の答えを見る
答え:②

4.. 24人の男性で6日間かかる工事を行います。作業の初日に8人が現場にあらわれず、次の日からも来ないことが分かりました。残った作業員だけで仕事を完了させるためには、当初の予定よりも何日間長くかかりますか?

  • 3日間
  • 4日間
  • 9日間
  • 15日間
問4の答えを見る
答え:①

TFT事務局より


支援先レポートNo.48
※印刷してポスターとしてご掲示いただけます

今回は、東アフリカの教育事情をご紹介しました。支援先の子どもたちが実際に受けている試験をご覧になって、どのように感じられたでしょうか。とりわけ印象的だったのは、数学の文章問題が日常生活に深く根ざしている点です。身近な場面を題材にした出題からは、「学ぶこと」が生活の一部であり、生きる力そのものであることが伝わってきます。日本の算数でも、買い物や公園までの距離といった日常に関わる問題を目にします。その国らしい生活の様子を題材にする共通点に親しみを覚えた方もいらっしゃるかもしれません。また、英語の試験の難しさにも驚かされます。ケニアでは、複数の母語に加え、公用語としてスワヒリ語と英語が使われており、英語教育は小学校の低学年から始まっています。こうした言語環境の違いからは、国ごとの文化や教育の奥深さを感じます。そして何より心を動かされるのは、子どもたちのまっすぐな眼差しです。「学ぶことが楽しい!」というキラキラと輝く瞳には、純粋な好奇心と前向きなエネルギーがあふれており、先生や学校、そして地域全体にポジティブな影響を与えているように感じます。私たちも、この輝きを守り、希望の灯を未来へとつないでいきたいと強く願っています。

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