支援先レポートVol.45を公開しました

支援先レポートVol.45 / May. 2024

東アフリカのお粥ケニア・ルワンダ・タンザニア

タンザニアのザンジバルの給食プログラムでは毎朝お粥が提供されます。主に生徒の保護者が当番制で調理にあたります。
朝7時に学校に来て、まず調理場の掃除から始めます。薪でお湯を沸かしている間に、必要な量の豆とソルガムキビの粉と砂糖を計量します。
粉を少量のお湯で溶いて、徐々にお湯の量を増やしながら混ぜていきます。砂糖を加えてさらに混ぜ続け、ぐつぐつと煮立ってきたら火を止めて冷まします。
お粥は熱すぎると子ども達がやけどをしたり、早く食べることができません。冷めてしまうと美味しくないので頃合いが難しいのです。
どの学校でも朝10時ごろにお粥が配られます。学校によって教室で食べたり、学年ごとに外で食べたりとまちまちですが、
朝ごはんを食べずに登校した生徒にとって、待ちに待ったこの日最初の食事です。

お粥は身近な存在

東アフリカの多くの地域でお粥はUji(ウジ)と呼ばれていますが、地域や材料によって呼び方が変わることもあります。
ルワンダではSOSOMA社の粉が広く流通しているため、お粥をSoSoMaと呼ぶこともあります。Sorghum (ソルガム), Soya(大豆), Maize (トウモロコシ)の粉末を混ぜたもので、頭文字をとって名づけられています。

東アフリカでは離乳食としてもお粥を与えます。雑穀やトウモロコシ、大豆の粉にビタミンやオメガ3などの微量栄養素が添加されたお粥の粉が販売されています。
市販のものが手に入らない地域では家庭で材料を混ぜ合わせます。
ある保護者は、米、ソルガム、大豆や落花生を挽いた粉に砂糖で甘みをつけた離乳食を与えると話してくれました。
栄養価の高い雑穀は日本や欧米でも見直されてきていますが、東アフリカの人々にとって雑穀のお粥は、幼いころから慣れ親しんだ味の一つです。

お粥の原料ソルガムキビ(右)とカウピーと呼ばれる豆(左)と、それを粉にしたお粥の素(下)

栄養価の高い穀物ソルガム

お粥の材料として使われているソルガムは日本語では「タカキビ」「もろこし」「コーリャン」と呼ばれるキビの一種です。乾燥した地域でも育つ植物で、東アフリカでは粉にしてお粥にするだけでなく、ビールやバイオ燃料の原料にも使われています。アフリカ原産で紀元前から栽培されていたといわれており、インドや中国を介して日本まで伝わりました。カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄などのミネラルを含む栄養価の高い穀物で、繊維質やタンパク質も含んでいます。またグルテンフリーであるため小麦の代替にも利用できるスーパーグレインとして最近日本でも注目を集めています。給食に栄養価の高いソルガムを毎日提供することで子ども達の健康増進に貢献しています。

色々なかまど

お粥や給食を調理するためのかまどは地域や学校によってさまざまです。燃料には薪を使っており、保護者や生徒が持ち寄っています。
ケニアやルワンダではTFTの支援で設置された省エネかまどで調理をしています。
省エネかまどは必要な薪の量を7~8割削減できるといわれていますが、高価なため外部からの支援がないとなかなか設置できません。

ルワンダでは政府予算による学校給食も推進されており、その一環として学校の敷地内の調理設備の設置が進められています。
TFTが支援するルワンダのバンダ村の小学校にも、ルワンダの技術大学がデザインしたかまどが設置されました。
焚口からの煙を調理人が吸い込まずにすむような工夫がされています。

  • タンザニア
  • ケニア
  • ルワンダの技術大学がデザインしたかまど

インタビュー / 子どもたちの好きな給食のメニューは?

  • ブライアン@ケニア
    好きな給食:お米と豆料理
    ケニア、ルシンガ島の幼稚園年長組のブライアン。
    両親は別の町で働いていて、小学校に通う兄と叔父、祖母と一緒に住んでいます。
    家で食べるのは主にウガリ、オメナ(小魚)や野菜。高価なお米はなかなか食べられません。
    勉強が好きなブライアンは、幼稚園の卒園式にお母さんが帰ってきて会えるのを楽しみにしています。

  • マーガレット@ケニア
    好きな給食:ウガリとスイカ
    マーガレットはケニアのルシンガ島の小学校6年生で、両親と姉妹の4人家族です。家ではオメナや魚、ウガリを食べています。将来は報道キャスターになりたいマーガレットは朝5時に起きて湖で水浴びをした後、登校する前にも勉強しています。土曜日は家族で教会に行き、家のお手伝いをして過ごします。

  • ジェンティル@ルワンダ
    好きな給食:お米
    ジェンティルはルワンダ、バンダ村の小学校2年生です。米は高価なのでなかなか家で食べることができません。ジェンティルは給食があることでしっかりと勉強できることに感謝しています。勉強を頑張って、将来はお医者さんになって家族や友人たちを治療したいと考えています。

TFT事務局より


支援先レポートNo.45
※印刷してポスターとしてご掲示いただけます

私生活で1歳と4歳の子を育てる母として、食事は日々の生活の中心にあります。きっと子育てにおいて食の悩みが切実であることは世界共通で、成長過程の子どもたちにとって、まさに食は生きる源だと感じます。日本では離乳食として最初に口にするのはお米の10倍粥が一般的ですが、東アフリカでは同じくお粥と呼ばれてもトウモロコシやキャッサバなど種類はさまざま、家庭ごと・作り手ごとに組み合わせも異なり、それぞれの「家庭の味」があるそうです。支援先では、子どもたちが慣れ親しんだ味を大切にしながら、なるべく地元で採れる食材(小魚や野菜、果物など)も活用し、お粥以外のメニュー日も作って学校給食を提供しています。今号では、お粥に焦点を当て、タンザニアにおける零細農家らの取組やルワンダにおける政府予算による給食推進の事例も紹介していますが、どの地域も保護者や地域コミュニティによる協力も大きいです。栄養改善には農業・教育・保健など複数の分野からのアプローチが必要ですが、学校給食から地域コミュニティに向けて、スモールコミュニティの中でも「支援から自立」へのさまざまなステップが生まれています。

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